お待たせいたしました Zen言語初の LTS 版が誕生

0.8.x シリーズの改善版、v0.8.20200609 をリリースいたしました。

Posted by connectFree Staff | 2020年6月9日

急に暑さが加わってまいりました。 Zen 言語も多数の新機能を携え、よりあつくなって皆様のもとへお届けする準備ができました。

Zen言語初の LTS 版

本リリースは、Zen 0.8 LTS (Long Term Support) の対象となります。 これより2年間、APIはフリーズしたまま、重大なバグフィックスなどのメンテナンスを継続します。 より安心して、Zen言語をご利用いただけます。

LLVM 10 への対応や非同期プリミティブ (async) のドキュメンテーション追加をはじめ、飛躍的な改善を実施しています。

安全性アップ

特に言語仕様では、ポインタ参照先をデフォルトでは変更できない修正を加えています。 この修正により、ポインタ参照先を書き換えたい場合には、mut修飾を追加で記述しなければならなくなりました。 この仕様変更に伴い、既存のコードの移行を簡単にするため zen fmt コマンドに --mut_conv オプションを用意しています。

C言語では歴史的経緯により、ポインタ参照先を書き換えたくない場合にconst修飾を追加します。 本来、無用なポインタ参照先への書き込みを防ぐために、必要な場合以外は全てconst修飾をするべきです。 しかしながら、プログラマはしばしばconst修飾を忘れがちです。 今C言語を再設計するのであればconstがデフォルトになるでしょう。

初心者の方向け機能

初心者の方向けに、コンパイラ・エラーを説明するためのツールも登場しました。

困ったときには、ぜひご利用してみてください。

Zen言語は次の時代を作る新しいプログラミング言語ですので、よりプログラマが正しくプログラムを書ける言語仕様を目指します。

v0.8.20200609 に対するチェンジログ

Zen 言語の漸進についてご紹介しましょう。

エディタの更新

以下のエディタのシンタックスハイライトを更新しました。

• GNU Emacs
• Sublime Text
• vim
• Visual Studio Code

LLVM

• LLVM 10.0.0 に対応しました

ドキュメント

• async / await のドキュメントを追加しました
  • ドキュメンテーション
• async に関連する標準ライブラリ event のドキュメントを追加しました
  • ドキュメンテーション
• コーディングスタイルガイド、キーワード一覧、Zen のビルドプロセス説明、用語集を付録として追加しました
  • ドキュメンテーション
• その他、全般的に内容を見直し、追加しました

ユーザーインタフェース

• メインメニューでロゴが表示されるようになりました
• --builtinフラグ導入のため、builtinコマンドを廃止しました
  • ドキュメンテーション
• コンパイルオプションで --mcmodel を指定できるようになりました
  • ドキュメンテーション
• コンパイルオプションで -mcpu を指定できるようになりました
  • ドキュメンテーション
• コンパイルオプションで -mattr を指定できるようになりました
  • ドキュメンテーション
• 実行したテストケースが全て出力されるようになりました
• テストビルドにおいて、テストランナーをユーザ定義できるようになりました
  • ドキュメンテーション
• zen cc コマンドを強化しました
  • C++のソースコードもコンパイル可能です
  • -target オプションでクロスビルド可能です
• zen fmt コマンドに --mut_conv オプションを追加しました
  • ドキュメンテーション
• コンパイルエラーの日本語対応を強化しました
• コマンドの説明を日本語対応しました

言語仕様

• API が非推奨であることを示す deprecated キーワードを導入しました
  • ドキュメンテーション
• コンパイラ builtin にバージョン番号を追加しました
• zen_probe_stackをcompiler_rtからspecial/start*に移動しました
• ライブラリをコンパイルする際、常にstart_libをロードするようになりました。
  • Windowsのコードをstart_libに移動しました
• コンパイルモードを検知するためにcompile_outputを追加しました
• interface 内で interface 型を返すメソッドが宣言できるようになりました
• 組込み関数 @IntType, @memberCount, @memberType, @memberName, @typeId, @ArgType を廃止しました
• 組込み関数 @Trap が @trap になりました
• 組込み関数 @typeOf が @TypeOf になりました
• 組込み関数 @overlay を追加しました
  • ドキュメンテーション
• 組込み関数 @intToPtr が型変換時にアライメントをチェックするようになりました
  • ドキュメンテーション
• 組込み関数 @call を導入し、 @inlineCall と @noInlineCall と @newStackCall と @asyncCall を廃止しました
  • ドキュメンテーション
• 組込み関数 @export の引数を変更しました
  • ドキュメンテーション
• 組込み関数 @to を導入しました
  • ドキュメンテーション
• 組込み関数 @is がオプション型を返すようになりました
  • ドキュメンテーション
• 数学関連の組込み関数 ( @sqrt など) から型パラメータを削除しました
  • ドキュメンテーション
• 文字列リテラルがNULL文字終端されたUTF-8文字列になりました
  • ドキュメンテーション
• C互換文字列リテラルを廃止し、終端付き配列を新しく導入しました
  • ドキュメンテーション
• 関数ABIの指定方法を変更しました
  • ドキュメンテーション
• 非網羅的な列挙型を追加しました
  • ドキュメンテーション
• interface の機能を改善しました
  • ドキュメンテーション
• 関数ポインタ型の宣言で extern を廃止しました
• ジェネリック関数で引数の型宣言するキーワードを var から anytype に変更しました
  • ドキュメンテーション
• 無名構造体リテラルを導入しました
  • ドキュメンテーション
• ポインタの参照先がデフォルトでは書き換えできないようになりました。参照先の値を書き換える場合は、mut修飾を追加します。
  • ドキュメンテーション

標準ライブラリ

• フォーマット文字列のAPIが、フォーマット文字列と無名構造体リテラルとのペアを受け取るようになりました
  • ドキュメンテーション
• addLLVMOptionをビルドスクリプトで利用できるようになりました
• ディレクトリを取得するためにstd.dirを追加しました
• ceil128を実装しました
• curl を使った std.http を実装しました
• クロスビルドAPIを刷新しました
  • ドキュメンテーション
• std.testing.notEqual を追加しました
  • ドキュメンテーション
• テスト結果の出力をより見やすくしました
• ビルドスクリプトで利用する step のAPIを interface を利用するように変更しました
  • ドキュメンテーション
• ビルドスクリプトに standardTargetOptions を追加しました
  • ドキュメンテーション
• std.unicodeのAPIを大幅に見直しました
  • ドキュメンテーション

Deprecated リストは以下の通りです。

Deprecated	代替のもの
build.Version	builtin.Version
build.Target	Target
build.CrossTarget	Target.Cross
builtin.Os	Target.Os
builtin.Arch	Target.Arch
builtin.Abi	Target.Abi
builtin.ObjectFormat	Target.ObjectFormat
builtin.SubSystem	Target.SubSystem
container.Buffer.ptr	将来削除されます。
container.CustomAllocatorBuffer	CustomAllocatorSentinelBuffer(*mut vtable heap.Allocator, u8, 0)
heap.direct_allocator	heap.page_allocator
fs.File.access	fs.Dir.access(self: Dir, sub_path: []u8, flags: File.OpenFlags) AccessError!void
fs.File.accessC	fs.Dir.accessZ(self: Dir, sub_path: [*:0]u8, flags: File.OpenFlags) AccessError!void
fs.File.accessW	fs.Dir.accessW(self: Dir, sub_path_w: [*:0]u16, flags: File.OpenFlags) AccessError!void
fs.File.openRead	fs.Dir.openFile(self: Dir, sub_path: []u8, flags: File.OpenFlags) File.OpenError!File
fs.File.openReadC	fs.Dir.openFileZ(self: Dir, sub_path: [*:0]u8, flags: File.OpenFlags) File.OpenError!File
fs.File.openReadW	fs.Dir.openFileW(self: Dir, sub_path_w: [*:0]u16, flags: File.OpenFlags) File.OpenError!File
fs.File.openWrite	fs.Dir.createFile(self: Dir, sub_path: []u8, flags: File.CreateFlags) File.OpenError!File
fs.File.openWriteMode	fs.Dir.createFile(self: Dir, sub_path: []u8, flags: File.CreateFlags) File.OpenError!File
fs.File.openWriteModeC	fs.Dir.createFileZ(self: Dir, sub_path_c: [*:0]u8, flags: File.CreateFlags) File.OpenError!File
fs.File.openWriteModeW	fs.Dir.createFileW(self: Dir, sub_path_w: [*:0]u16, flags: File.CreateFlags) File.OpenError!File
fs.File.openWriteNoClobber	fs.Dir.createFile(self: Dir, sub_path: []u8, flags: File.CreateFlags) File.OpenError!File
fs.File.openWriteNoClobberC	fs.Dir.createFileZ(self: Dir, sub_path_c: [*:0]u8, flags: File.CreateFlags) File.OpenError!File
fs.File.openWriteNoClobberW	fs.Dir.createFileW(self: Dir, sub_path_w: [*:0]u16, flags: File.CreateFlags) File.OpenError!File
fs.File.openHandle	将来削除されます。
fs.Dir.open	fs.Dir.openDir(self: Dir, sub_path: []u8, args: OpenDirOptions) OpenError!Dir
fs.Dir.openC	fs.Dir.openDirZ(self: Dir, sub_path_c: [*:0]u8, args: OpenDirOptions) OpenError!Dir
fs.Dir.openRead	fs.Dir.openFile(self: Dir, sub_path: []u8, flags: File.OpenFlags) File.OpenError!File
fs.Dir.openReadC	fs.Dir.openFileZ(self: Dir, sub_path: [*:0]u8, flags: File.OpenFlags) File.OpenError!File
fs.Dir.openReadW	fs.Dir.openFileW(self: Dir, sub_path_w: [*:0]u16, flags: File.OpenFlags) File.OpenError!File
fs.Dir.openDirC	fs.Dir.openDirZ(self: Dir, sub_path_c: [*:0]u8, args: OpenDirOptions) OpenError!Dir
fs.Dir.openFileC	fs.Dir.openFileZ(self: Dir, sub_path: [*:0]u8, flags: File.OpenFlags) File.OpenError!File
fs.Dir.openFileWindows	fs.Dir.openFileW(self: Dir, sub_path_w: [*:0]u16, flags: File.OpenFlags) File.OpenError!File
fs.deleteDir	fs.Dir.deleteDir(self: Dir, sub_path: []u8) DeleteDirError!void
fs.deleteDirC	fs.Dir.deleteDirZ(self: Dir, sub_path_c: [*:0]u8) DeleteDirError!void
fs.deleteDirW	fs.Dir.deleteDirW(self: Dir, sub_path_w: [*:0]u16) DeleteDirError!void
fs.deleteTree	fs.Dir.deleteTree(self: Dir, sub_path: []u8) DeleteTreeError!void
fs.readLink	fs.Dir.readLink(self: Dir, sub_path: []u8, buffer: *mut [MAX_PATH_BYTES]u8) ![]mut u8
fs.readLinkC	fs.Dir.readLinkZ(self: Dir, sub_path_c: [*:0]u8, buffer: *mut [MAX_PATH_BYTES]u8) ![]mut u8
fs.makePath	fs.Dir.makePath(self: Dir, sub_path: []u8) !void
fs.readFileAlloc	fs.Dir.readFileAlloc(self: Dir, allocator: heap.Allocator, file_path: []u8, max_bytes: usize) ![]mut u8
fs.readFileAllocAligned	fs.Dir.readFileAllocAligned( self: Dir, allocator: heap.Allocator, file_path: []u8, max_bytes: usize, comptime A: u29,) ![]align(A) mut u8
fs.writeFile	fs.Dir.writeFile(self: Dir, sub_path: []u8, data: []u8) !void
c.futimes	c.futimens(fd: fd_t, times: *[2]timespec) c_int
c.parse	将来削除されます。
os.accessC	os.accessZ(path: [*:0]u8, mode: u32) AccessError!void
os.execveC	os.execveZ(path: [*:0]u8, child_argv: [*:null]?[*:0]u8, envp: [*:null]?[*:0]u8) ExecveError
os.execvpeC	os.execvpeZ(file: [*:0]u8, argv: [*:null]?[*:0]u8, envp: [*:null]?[*:0]u8) ExecveError
os.getenvC	os.getenvZ(key: [*:0]u8) ?[]u8
mem.lenWithSentinel	mem.len(ptr: anytype) usize
mem.toSlice	mem.slice(ptr: anytype) Slice(@TypeOf(ptr))
mem.toSliceConst	mem.slice(ptr: anytype) Slice(@TypeOf(ptr))
mem.toSliceWithSentinel	mem.slice(ptr: anytype) Slice(@TypeOf(ptr))
mem.toSliceConstWithSentinel	mem.slice(ptr: anytype) Slice(@TypeOf(ptr))

Windows

• Windows での meditation 出力を修正しました
• Windows で lld が weak リンケージを使えるようにしました